次に生徒たちの実際の活動の内容について、2002年度に入った生徒を例に紹介
していきます。2002年度に中学3年生の生徒が約10名入り、この生徒たちの多くが
高校3年生で卒業するまで、4年間この活動に参加しました。
@いろいろ知りたい!
最初生徒たちは、社会のいろいろな出来事について「知りたい」という知的好奇心から
参加したようです。
「何が知りたい?」と聞くと、社会科の授業で習った「核兵器」、ニュースで見た
「北朝鮮」との答え。「ではそれをテーマにこんなことを調べたら?」、「これはどう
なっているのかな?」とアドバイスするのが顧問の役目。
生徒はこの助言で、自分なりに知りたいテーマを設定し、それぞれで調べてきました。
私自身は社会科の教師ですが、授業では一方的な知識伝達型の授業になりがちで、
「授業で習ったことについてもっと知りたい」や「この問題について自分の意見を述べたい」
といったことを十分やって来なかった反省があります。
この活動では、そういった生徒自身が持つ好奇心をしっかり活かし、そして調べたことに
ついて自分なりの意見を発表し、それに対し他の人が質問、意見を述べる中で、自分の考えを
深めていくことを大切にしました。
A世界の今の出来事も教材!
発表も一巡した頃、世界では、アメリカによるイラク戦争が始まりそうでした。
日々のニュース・新聞を使い、「戦争が始まる」瞬間を、生徒たちと共有しました。
そしてインターネット・新聞から賛成・反対の意見を調べ、自分たちなりの考えをもちました。
戦争が終結?したあとは、戦争中報道されなかった事実がたくさんあることが分かり、
TVや新聞のニュースがすべてを伝えているわけではないことにも気付かされました。
この出来事には生徒もたいへん関心があったようで、その後のテーマには「アメリカの戦争の
歴史」や「イラク戦争後の犠牲者」などについて調べる者もありました。
戦争は遠い歴史のお話ではなく、今の世界でも起こっていることや、ミサイルや攻撃の
向こうに「人間がいる」という想像力が大切ということを生徒も感じました。
B自分の目で見て聞いて
これらの活動の中では、南北問題のビデオを見せたりもしました。その中で「実際に見て
みたい」と、本校のフィリピン姉妹校との短期研修旅行に参加する者も出てきました。
参加した生徒は発表のテーマとして「フィリピンで見たこと、聞いたこと」というテーマで、
実際に目の当たりにした貧富の差の現状、植民地だった頃の名残、現地の学校での意識の
高さ・・・などについて発表しました。
この発表をした生徒は、発表のあと「自分でできることは何だろう?」と考えるようになり、
次のテーマに「ユニセフ」の活動を調べるようになりました。世界のこどもの現状や募金の
使われ方など、南北問題という世界の大きな問題を、自分がまずできることに引き寄せて
考えるようになりました。
C発表はする側も、聞く側も勉強になる
この生徒たちが在籍した4年間、とにかく自分たちでテーマを考えさせ、そして自分たちで
調べ、まとめ、そして発表しました。
そしてこれらを発表し、それを他のメンバーも聞くことで幅広い知識をつけていったように
思います。もちろん発表する側も、聞いた人からの考えを聞いて、「そんな視点もあるのか」
と自分の考えを深めることにもつながったように思います。
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